ビルのバリューアップ事例7選|賃料・稼働率を高めた実践アイデア

所有するビルのバリューアップを検討しているものの、「どのような改修がいいのか」「収益改善につながる事例が知りたい」というオーナーも多いのではないでしょうか。
所有ビルの収益性が落ちていても、適切な改修によって高い収益性を持つ資産へと生まれ変わらせることが可能です。
本記事では、異なるアプローチで収益改善を実現したバリューアップの事例を7つ紹介します。
自社物件の改修を検討しているオーナーは、ぜひ参考にしてみてください。

バリューアップとは、老朽化した不動産にリノベーションやリフォーム、耐震補強などを施すことで、物件の価値を向上させ、収益性を高める取り組みを指します。
建物は年月とともに設備が劣化し、テナントのニーズに応えられなくなることで、空室の増加や賃料の下落につながりやすいです。
市場のニーズに合わないバリューアップを実施しても、コストがかかるだけで資産価値や収益性が向上しない可能性があります。
そのため、収益性が下がっている原因を見極めた上で、ニーズに合った改修を進めることが重要です。
バリューアップの手法は、設備交換といった小規模なものから、間取り変更・用途転換を伴う大規模リノベーションまで幅広く、物件の状態や目的に応じて選択します。

ビルの収益改善に向けた取り組みは、物件の課題や立地条件によってアプローチはさまざまです。
ここでは、国土交通省が実施している老朽不動産の更新を推進するための事業で選定された中から、7つの事例を取り上げて紹介します。
自社物件の改修を検討する際の参考としてご活用ください。
参照:中小ビルのバリューアップ改修投資の促進に向けたモデル調査事業 第2期採択モデルの決定

東京都文京区に位置する、築33年・地上8階建てのオフィスビルで実施された改修事例です。
このビルは、環境性能が時代の要求に追いつかず、老朽化による賃料競争力の低下が課題となっていました。
実施内容は、断熱性能の向上や高効率設備への入れ替え、空調設備容量の見直しによる環境改修
となっています。
CO2排出量の削減を目指しながら、入居者専用ラウンジの新設によりテナントの働きやすさにも配慮されています。

大阪府大阪市に位置する、築37年・地上9階建てのビルで実施された改修事例です。
新築時に検査済証を取得していたものの、テナント利用に伴う改修により遵法性に問題のある箇所が生じていた物件で、法適合調査を実施した上で違反箇所の是正工事を行いました。
さらに、これまで実施されていなかった外壁改修を加えています。
安全性を確保し、空調・換気設備の更新やLED照明への切り替えによる設備の高効率化により、CASBEE不動産の取得を目指す内容となっています。

この事例の物件には遵法性に問題のある箇所が存在しており、用途変更・増築に先立ち違反箇所の是正と検査済証の取得を計画しました。
改修では、オフィス屋内外の緑化や各フロアで異なるレイアウトを採用して、働く人が空間を選べる設計を取り入れています。
また、既存の駐車場スペースを事務所用途へ転換することで、限られた敷地内に新たな執務面積を生み出しています。
設備の高効率化による環境認証の取得も見据えており、物理的な価値向上と賃料プレミアムの両立を狙った事例です。

この事例のビルでは、老朽化による物理的な劣化と収益性の低下が課題となり、建替えも検討されましたが、既存建物を活かすストック活用の観点から改修を選択しました。
建物診断で指摘された安全性の確保と、緊急性の高い修繕を実施しています。
加えて、共用ラウンジやテラスの新設、防犯カメラの設置、シェアオフィス機能の追加など、テナントにとっての魅力向上につながる整備を幅広く盛り込んでいます。
建替えではなく改修によって収益性の回復を目指したこの事例は、同様の課題を抱えるビルオーナーにとって参考になるアプローチです。

新築時から内装・設備が長年改修されず、テナントニーズに応えられない状態となっていたビルの事例です。
賃料・収益性の低下が課題となっていたため、共用ラウンジ・WEB会議ブースなどの整備を通じてリモートやハイブリッドワークに対応したシェアオフィスへの転換を図りました。
多様な個室バリエーションを設けることで、スタートアップ企業の成長に合わせたオフィス拡張にも対応しています。
内装・動線・共用部の全面的な刷新によって、同規模の都市型オフィスビルへの広い適用可能性が評価されています。

この事例の物件は、新築当時はカプセルホテルと店舗として利用されていましたが、後にサウナが増設されたことで積載荷重が基準を超過し、是正が必要とされていました。
建物全体の減築工事によりサウナを除いた4階以上の外壁コンクリートを解体し、新たな開口部を設けることで遵法性を確保しながら上層階の採光と眺望を改善しています。
上層階をセットアップオフィスへ用途変更し、スタートアップ企業を誘致した結果、改修後の賃料水準は近隣の新築物件と同水準に達しました。
空間性能を新築相当まで引き上げた点が、高く評価されています。

築古ビルを、中小企業やベンチャー企業が入居できる環境配慮型ビルとして、再生させた事例です。
100%再生可能エネルギーの活用やアップサイクル建材の採用、屋上へのミニビオトープ整備など、入居するだけで環境貢献を体感できる仕組みを構築しました。
空調・換気設備の効率化やLED照明への切り替えを行った上で、DBJ Green Building認証を取得し、グリーンプレミアムを反映した賃料水準を実現しています。
環境への取り組みを物件の付加価値として打ち出すことで、築古ビルでも競争力のある賃料設定を可能にした事例となっています。

今回紹介した7つの事例からわかるように、バリューアップの手法は物件の課題や立地条件によって大きく異なります。
省エネ対応・法令是正・シェアオフィス化・環境認証の取得など、どのアプローチも共通しているのは「現代のテナントニーズに応える物件づくり」という点です。
改修に踏み出せずにいるオーナーにとって重要なのは、まず自社物件の課題を正確に把握し、市場のニーズと照らし合わせた上で改修の方向性を定めることです。
適切な改修によって、築古ビルは新たな収益力を持つ資産として、生まれ変わる可能性を秘めています。